専門家がPET検査をわかりやすく解説。食事や運動を制限する理由や検査費用を解説

PET検査には、検査前に守るべき事がたくさんあります。

例えば、PET検査前に糖分をとってしまうと腫瘍の悪性度や治療の効果がわかりません。また過度の運動よって腫瘍の位置がわかりずらくなります。

どうしてそうなってしまうのか、わかりやすく解説していきます。

この記事でわかること
  • PET検査で病気が分かる仕組み
  • PET検査前に気を付けることとその理由
  • PET検査の流れと検査に後に気を付けること
  • PET検査による被ばく量
  • PET検査にかかる費用
目次

PET検査で癌の場所や悪性度がわかる仕組み

PET(Positron Emission Tomography)検査は、病院で行われる画像検査の1つです。

FDGと呼ばれる特別な薬を使います。

この薬は、FDG:フルオロデオキシグルコースと呼ばれています。

FDGとは
  • グルコース(糖分)の一部の塩基を18Fで置き換えたものです。
  • つまり、放射性物質がくっついた糖分ということになります。
  • 18Fは微量の放射線を出す放射性物質です。加速器をつかって核反応で作られます。109分でエネルギーは半減します。
  • FDGは糖分と同じ性質をもつため、体内にある他の糖分と一緒に体の細胞や癌細胞に使われます。

FDGは撮影を行う前に注射によって体内に投与されます。その後、他の糖分と同じように吸収されて、体内(臓器や筋肉、脳内)に広がります。

広がったFDGからは微量の放射線がでているので、特殊な装置で撮影すると位置がわかります。

癌は糖分をたくさん使うので発見しやすい

癌などの悪性腫瘍は、増殖のために糖分をたくさん使います(正常な部分の5~20倍)。

そのため癌細胞にはFDGが多く集まり、18Fからの放射線も多くなります。

その様子は画像上で確認することができます。


By Wiki

↑↑↑ 正常な腎臓もうっすら写っていますが、癌病変は真っ赤になって見えます。

このような仕組みで、糖分が異常に多く集まっている場所を探し出すことで、病気の発見や腫瘍や癌の大きさ、悪性度を調べることができます。

PET検査が保険適応になる病気

PET検査は、非常に高額な検査ですが、保険適応になれば1~3割負担で検査が受けられます(検診は保険適応外)。

保健適応となる疾患は以下の通りです。

悪性腫瘍の検索

早期胃がん除いて、悪性リンパ腫が含まれます。(早期の胃がんは糖が集まりにくく有効性が確認されていないため除かれます。)

ただし、他の検査,画像診断により病期診断,転移・再発の診断が確定できない患者に使用することとされています

てんかん焦点の検索

てんかんは、主に皮質の異常を原因とする疾患です。脳内の過剰な電気信号によってさまざまな発作がおこります。

てんかんの原因となっている部分(焦点)には、糖分が集まりにくいため、PET検査で焦点の場所を探すことができます。

外科的に焦点の切除が必要な場合、その位置を見つけるのに役立ちます。

難治性部分てんかんで外科切除が必要とされる患者に使用することとされています。

心疾患の評価

心臓に関しては、虚血性心疾患が対象です。

心不全患者における心筋の生存能(バイアビリティ)の評価に使われます。

心筋の生存能の評価は、SPECT検査やMRI検査などでもできますが、それらの検査で判断のつかない場合に限って行うことができます。

心筋にできる良性腫瘍である心サルコイドーシスにおける炎症部位の診断にも使用することができます。

その他

2018年2月16日付で大型血管炎の診断における炎症部位の可視化が保険適応になりました。

高安病などの大動脈(大型血管系)において炎症の有無や活動性の判断に使うことができます。

ただし、他の検査で病変の局在又は活動性の判断のつかない患場合に使用することができます。

PET検査を受ける前に気を付けること

ここからは、PET検査を受ける前に気をつけてほしいことを紹介します。

ここまでに説明した通り、PET検査は糖の代謝を利用した検査です。そのため、それを妨げるようなことはしてはいけません。

食止めの指示は必ず守る

PET検査は、糖分に微量の放射線を出すRIを結合したもの(FDG)を使います。

体内に注射したFDGを、体や癌細胞がFDGを取り込むことで病変を見つけます。

血糖値が上がるとFDGの集まりが減ってしまう

しかし、食事などによって体内に余分な糖分があると、体や癌細胞が取り込むFDGの量の割合が減ってしまいます。

そうなると、癌病変へのFDGの集まりが悪くなって過小評価(癌病変の見落とし)につながります。

血糖値が上がるとFDGの集まりが見にくくなってしまう

食事をするとインスリンが分泌されます。インスリンが分泌されると、グルコーストランスポータの働きで、全身の筋肉にも糖分(FDGも)が取り込まれます。

FDGを投与しても、全身の筋肉に取り込まるれるため、癌病変に集まるFDGの量が減ってしまいます。

また、正常組織と癌病変のFDGの集まりに差が少なくなり、病変の見落としにつながります。

食止めの指示はしっかり守ろう

PET検査の時には、数時間前から糖分を含むものの摂取が禁止となります。(何時間前から禁止にするかは施設によって違います。)

もちろん食事だけでなく、糖分を含むすべてのものが禁止です。

ガムや牛乳など意外なものにも糖分は含まれています。飲むのは水か糖分を含まないお茶だけにしましょう。

こっそり食べても、検査前に血糖値を測るのでバレてしまいます。

そしてなにより、正確な検査ができなくなります。

前日と当日は過度な運動はしない

運動すると、細胞は多くの糖分を使います。

安静にしていれば正常な部分と同じくらいしか使われませんが、過度な運動をすると筋肉にダメージが残り、安静にしていても修復のため多くの糖分が使わます。

そのため、前日の過度な運動により、全身の筋肉にFDGが集まる原因になります。

検査中も安静が必要です。

FDGを注射した後、検査までは45~90分間の安静待機をします。その間にFDGが体に取り込まれます。

この時運動をしたり、おしゃべりをしたり、スマホを操作していると使われた筋肉にFDGが集まります。

待機中はできるだけ安静にしましょう。施設によっては、脳への集積を抑えるため、暗い部屋で安静待機させる場合もあります。

PET検査の流れ

PET予約から検査終了までの流れと注意点を紹介します。

検査の予約

PET検査は予約の段階から注意が必要です。

確認しておくこと
  • 食止め時間(何時間前から糖分の摂取が禁止なのか)を聞いておく
  • 検査時間(施設によっては、2回撮影する場合があります)を聞いておく
  • 都合が悪くなった時の連絡先と、キャンセル料の有無を確認しておく

・食止め時間は施設によって違います。しっかり確認しておきましょう。

・検査の何時間前に行くのか、検査にはどのくらいかかるのか確認しておきます。(施設によっては、時間をあけて2回撮影をする場合があります。)

・PET検査に使われるFDGは約5万円します。直前のキャンセルの場合、施設によって、FDG代だけ請求される場合もあります。(検査自体は行われないので保険はききません)

検査前日

過度な運動はやめて、静かに過ごしましょう。

階段を駆け上がるのもやめましょう。

検査当日

決められた時間に従って糖分制限をします。

過度な運動も控えます。階段よりエレベーターを使いましょう。

  • 検査の前にガウンに着替えをします。
  • 検査直前に体重と血糖値を測ります。
  • FDGを体内に注射します。
  • 専用の部屋で45~90分安静待機します。
  • PETとCTの検査を行います。(約20分)

施設によっては、再び安静待機をしてもう一度撮影(遅延撮影を)することがあります。※腸管の生理的な集積と病変の集積を見分けるためです。

PET検査後は人に近づかない

PET検査で使われるFDGからは、ガンマ線という放射線がでています。

検査後は、バスやデパートなど人がたくさんいるところは避けましょう。

FDGから出てくる放射線は、健康に問題はないとされています。しかし、検査に関係ない人への無駄な被ばくは避けるべきです。検査当日は、人込みは避けましょう。

その他に気をつけること
  • 乳幼児や小さな子を抱っこするのは避ける
  • FDGは尿内に排泄されるので、トイレで飛び散らさないように注意。トイレは2回流す。

距離をとる

FDGからの放射線は、距離の自乗に反比例して減少します。つまり、距離を2倍とれば放射線量は1/4になります。

できるだけ距離をとりましょう。

時間をあける

FDGの半減期(放射線量が半分になる時間)は109分です。つまり、109分経つごとに半分になります。

20時間後には1/1000以下になります。

それ以外にも尿から体外へでていくので、20時間たてば周りへの影響は心配いりません。

PET検査による被ばく量

PET検査では、必ずCTも一緒に撮ります。

そのため、放射性核種である18Fからの被ばくの他にCT検査による被ばくをうけることになります。

使われるFDGの量やCTで使われるX線の量は、体格や装置の性能によってさまざまです。

一般的には、PET検査では約3mSv、同時に撮るCT撮影では5~10mSv程度です。(ちなみに胸部のX線撮影(レントゲン)は。1回 0.1mSv以下です。)

PET検査では、体の内部から放射線を受けるので内部被ばくとなり、CT撮影では外部から放射線を受けるので外部被ばくになります。

被ばく量は比較的多めですが、全身の癌病変の検索ができるというメリットは大きいと言えます。

PET検査にかかる費用

PET検査は、適応疾患であれば保険が使えます。

一般的に使われているPET/CT検査の保険点数は8625点です。つまり86250円

これに、核医学診断料、画像診断管理加算、電子画像管理加算などが加わり。約10万円となります。

保健適応で3割負担の方は約3万円の支払いとなります。(施設によって多少違います)

もし、ドックなどでPET検査を受けるときは保健適応外になるので約10万円かかります。

注意事項を守って、自分のためになるPET検査を受けよう

PET検査は、全身の癌を早期に見つけることができる、画期的な検査です。

しかし、食止めや運動制限をしっかり守らないと正しい検査ができません。

放射線被ばくや高い検査料を無駄にしないために、注意事項をしっかり守って検査を受けましょう。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。(ゴマメ)

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